もくじ
1. 「バキッ」という音とともに、15万円が消えた
深夜の高速道路、カスタム済みの低車高セダンを積載車に積み込んでいた時のことです。
車両を慎重に滑らせ、荷台に乗せた瞬間、「バキッ!」という嫌な音が聞こえました。
見ると、積載車のサイドアオリが大きく歪んでいました。
低車高車両の車幅が予想以上に広く、アオリの立ち上がり部分に当たってしまったのです。
修理費用は15万円。
しかも、修理期間中は積載車が使えず、機会損失も発生しました。
レッカー業界で15年、最も後悔しているのが「アオリを壊してしまった若い頃の失敗」です。
アオリは積載車にとって重要な部品であり、一度壊すと高額な修理費がかかります。
2. アオリとは何か、なぜ壊れやすいのか
まず、アオリの基礎知識から確認しましょう。
アオリとは、トラック荷台の周囲に取り付けられている、板状の貨物を落ちないようにするための板状の部品です。
アオリは平ボディやダンプ、ウイングといったトラックに取り付けられており、それぞれのボディに適した特色があります。
アオリの主な役割は、貨物の落下防止です。
荷台の壁面となるアオリがないと、走行中の振動やカーブなどで貨物が落下してしまいます。
引用元:同上
でも、積載車のアオリは、通常のトラックより壊れやすいんです。理由は3つあります。
理由1:低車高車両の接触
最近のカスタムカーは、車高を極限まで下げています。
その結果、車幅が広がり、積載時にアオリの立ち上がり部分に接触しやすくなります。
理由2:長尺車両のはみ出し
セダンやワゴンの中には、全長5メートルを超える車両もあります。
積載車の荷台長が足りず、車両が前後にはみ出すと、アオリに過度な負荷がかかります。
理由3:アオリの経年劣化
走行中はエンジンによる微振動が続き、積荷はあおりに固定されますが、その微振動によってあおりを摩擦し続けます。
そして微細な摩擦キズは徐々に拡大し深く広がっていきます。
3. 積み込み前の3つの確認事項
アオリを壊さないためには、積み込み前の確認が重要です。
ベテラン隊員が実践している3つの確認事項をご紹介します。
確認1:車両サイズの測定
まず、積み込む車両の正確なサイズを測定します。
特に重要なのは以下の3点です。
- 全長:バンパーからバンパーまで
- 全幅:タイヤの外側から外側まで
- 車高:最も低い部分(エアロパーツやマフラー)
メジャーを常に携帯し、依頼者の申告だけに頼らないことが鉄則です。
確認2:積載車のアオリ幅の確認
次に、積載車のアオリ内寸を確認します。
特に、サイドアオリの立ち上がり部分の内寸が重要です。
低車高車両の場合、車幅+10センチ以上の余裕がないと、接触のリスクが高まります。
確認3:積載方法の決定
車両サイズとアオリ幅を確認したら、積載方法を決定します。
選択肢は3つです。
- 斜め積み:車両を斜めに積み、アオリとの接触を避ける
- サイドアオリを倒す:アオリを完全に倒して、接触を回避
- フルフラット加工:アオリの立ち上がり部分を事前に切断
どの方法を選ぶかは、車両の状態と積載車の仕様によります。
4. 低車高車両の積み込み5ステップ
では、実際にどう積み込むのか。
低車高車両を安全に積む5ステップをご紹介します。
ステップ1:ラダーレールの角度調整
低車高車両は、通常よりラダーレールの角度を緩やかにします。
目安は10度以下。急な角度だと、車両の底を擦ります。
ラダーレールの長さが足りない場合は、延長ラダーを使用します。
ステップ2:車両の中心線を合わせる
車両を積載車の中心線に正確に合わせます。わずかでもズレると、サイドアオリに接触します。
目安は、車両の中心と積載車の中心が一致していること。地面にチョークで線を引くと分かりやすいです。
ステップ3:ゆっくりと滑らせる
ウインチを使って、ゆっくりと車両を滑らせます。
このとき、必ず2人体制で作業します。1人がウインチを操作し、もう1人が車両とアオリの隙間を監視します。
「もう少し左」「ストップ」という声掛けが、アオリを守ります。
ステップ4:サイドアオリとの隙間を確認
車両が荷台に乗ったら、サイドアオリとの隙間を確認します。
両側とも5センチ以上の隙間があれば安全です。
3センチ以下なら、走行中の振動で接触する可能性があります。
再度、位置を調整します。
ステップ5:固定と最終確認
車両を固定したら、最終確認を行います。
走行中にズレる可能性を想定し、緩衝材をアオリに挟むのも有効です。
実際の作業としては、道具のメンテナンスも重要です。
以前ご紹介した「道具のメンテナンス:現場で差がつく、レッカー架装部のグリスアップポイント」でも触れましたが、ウインチやラダーレールの定期的なメンテナンスが、スムーズな積み込みを支えます。
5. 長尺車両の積み込み術
次に、全長5メートルを超える長尺車両の積み込み術をご紹介します。
問題点:荷台からはみ出す
積載車の荷台長は、通常4.5メートルから5メートルです。
全長5.3メートルのセダンを積むと、前後どちらかが30センチ以上はみ出します。
道路交通法では、自動車の車体の前後から自動車の長さの十分の一の長さを超えてはみ出さないことが規定されています。
引用元:運送業サポート「トラック積載の【はみ出しルール】の改正」
積載車の全長が6メートルなら、前後60センチまではみ出してOKということです。
対策1:斜め積み
車両を斜めに積むことで、はみ出しを最小限に抑えます。
ただし、斜め積みはサイドアオリとの接触リスクが高まるため、注意が必要です。
対策2:前方はみ出しを選ぶ
前方にはみ出すか、後方にはみ出すか。安全性を考えると、前方はみ出しが推奨されます。
理由は、運転席から確認しやすいからです。
後方はみ出しは、後続車から見えにくく、事故のリスクが高まります。
対策3:赤旗の設置
はみ出す部分には、必ず赤旗を設置します。
これは道路交通法で義務づけられています。
夜間の場合は、赤色の反射板も追加します。
6. アオリを壊してしまった時の対処法
どんなに注意しても、アオリを壊してしまうことがあります。
その時の対処法を3つご紹介します。
対処法1:応急処置
アオリが歪んだり、ヒンジが外れたりした場合、応急処置として針金やロープで仮固定します。
これで、とりあえず走行は可能になります。
対処法2:修理業者への連絡
応急処置をしたら、すぐに修理業者に連絡します。
アオリの修理費用は、簡単な修理でも10万円前後することもあります。
対処法3:保険の確認
自社の車両保険で、アオリの修理がカバーされるか確認します。
多くの場合、車両保険の対象になります。
7. アオリの予防的メンテナンス
アオリを長持ちさせるには、予防的メンテナンスが重要です。
メンテナンス1:定期的な洗車
サビの原因となる泥や塩分を、こまめに洗い流します。特に、海沿いを走行した後は必須です。
メンテナンス2:ヒンジ部分のグリスアップ
アオリのヒンジ部分は、開閉を繰り返すため摩耗します。月1回、グリスアップを行うことで、ヒンジの寿命が延びます。
メンテナンス3:歪みの早期発見
アオリに小さな歪みが出たら、放置せずに修理します。小さな歪みが、大きな破損につながります。
8. フルフラット加工という選択肢
頻繁に低車高車両を運ぶ場合、積載車のフルフラット加工を検討する価値があります。
フルフラット加工とは、サイドアオリの立ち上がり部分を完全に切断し、フラットに仕上げる加工です。
メリット:低車高車両の積み込みが格段に楽になる
デメリット:通常の車両を積む際、荷崩れのリスクが高まる
費用は20万円から30万円程度。
低車高車両の依頼が月に10件以上あるなら、検討する価値があります。
9. まとめ:アオリは積載車の命
アオリは、積載車にとって「荷物を守る壁」であり、同時に「壊れやすい弱点」でもあります。
アオリを守るための5つのポイント:
- 積み込み前に車両サイズとアオリ幅を必ず確認
- 低車高車両はラダーレールの角度を10度以下に
- 2人体制で作業し、隙間を常に監視
- 長尺車両は前方はみ出しを選び、赤旗を設置
- 定期的な洗車とグリスアップで予防的メンテナンス
アオリの修理費用は15万円。
でも、それ以上に痛いのは、修理期間中の機会損失です。
1週間積載車が使えなければ、数十万円の売上を失います。
あなたの会社では、アオリを壊したことがありますか?
もしまだなら、それは運が良かっただけかもしれません。
次の依頼が、極低車高のシャコタンセダンかもしれません。
その時、この記事を思い出してください。
慎重な確認と、ゆっくりとした作業が、アオリを守ります。