2024年1月1日、能登半島を襲ったマグニチュード7.6の地震。
家屋が倒壊し、道路が寸断され、津波が押し寄せた。
そんな被災地に、全国から集結したレッカー車があった。
彼らの使命は、道路をふさぐ被災車両を一台ずつ排除し、救援物資や緊急車両が通れる道を作ること。
テレビのニュースでは映らない、災害復興の最前線。
レッカー車がどれだけ重要な役割を果たしているか、知っていますか?
もくじ
1. JAF-FASTとは何か
JAF-FASTという言葉を聞いたことがあるでしょうか。
これは能登半島地震をきっかけに生まれた、災害被災地に赴く即応支援チームです。
全国に約2000名いるJAFのロードサービス隊員のうち、JAF-FASTとして認定される隊員はその中のわずか1%。
精鋭中の精鋭です。
彼らはハイエースをベースにした災害支援車に、発電機、ポータブル電源、簡易トイレ、備蓄食品・水、簡易ベッド、電動工具、テントなどを積み込み、被災地へと向かいます。
そして現場で宿営しながら、救助作業を実施するんです。
2. なぜJAF-FASTが必要だったのか
実は能登半島地震の前から、JAFは災害支援を行っていました。
JAFロードサービス特別支援隊は2004年に発足し、東日本大震災(2011年)や熊本地震(2016年)でも活動してきました。
でも、能登半島地震で大きな問題が浮き彫りになったんです。
出動したJAFチームは金沢から来ていましたが、現地で留まる準備がなかったために、毎日数時間かけて基地と被災地を往復することになってしまいました。
これは作業時間の大幅なロスを意味するだけでなく、隊員の体力面への負担も懸念されます。
引用元:Motor-Fan(同上)
往復で4時間。
本来なら被災車両の排除に使えたはずの時間が、移動だけで消えてしまう。
これでは救援物資も緊急車両も、待たされてしまいます。
そこで設立されたのがJAF-FASTです。
現場で宿営し、移動時間をゼロにする。
これが最大のポイントです。
3. 被災地でレッカー車が果たす3つの役割
では、具体的にレッカー車は被災地で何をするのか。
主な役割は3つあります。
役割①:道路をふさぐ被災車両の排除
地震や津波で、道路上に放置された車両。
横転した車。
水没した車。
これらが道路をふさいでいると、救援物資を運ぶトラックも、消防車も、救急車も通れません。
被災地では、電気、水道などのライフラインが寸断され、食料や水などの救援物資が大量に必要とされます。
道路交通の復旧が遅れることは、被災者にとって死活問題につながりかねません。
だからこそ、警察や自治体と連携して、道路をふさぐ被災車両の排除にあたるんです。
道路交通の迅速な回復に努め、被災地全体の復旧に尽力しています。
東日本大震災では、3月18日から6月17日までの間、全国の隊員合計156名を被災地に派遣し、移動した車両は計4,554台にのぼりました。
4,554台。
この数字が、どれだけの道を開いたか想像できますか?
役割②:被災者からの救援要請への対応
被災地では、被災車両の排除だけでなく、お客さまからの救援要請も急増します。
2019年の台風19号では、長野県、栃木県、千葉県、福島県内に全国から延べ263名の特別支援隊員を派遣し、冠水車両の搬送作業など、10,720件の救援要請に対応しました。
引用元:同上
10,720件。
1日平均で500件以上です。
通常のロードサービスとは桁違いの対応数です。
役割③:被災車両の無料点検サービス
車中泊を余儀なくされた被災者のために、マイカー無料点検サービスも実施します。
エンジンオイル、バッテリー、タイヤの空気圧や摩耗、ランプ類の点灯・点滅などをチェックします。
引用元:同上
避難所で過ごす人の中には、自分の車で寝泊まりしている人もいます。
その車が故障したら、寝る場所もなくなってしまう。
だから、無料点検が必要なんです。
4. 災害派遣に必要な特別なスキル
JAF-FASTに選ばれる隊員は、通常のロードサービス以上の技術と体力、そして精神力が求められます。
被災地では、過酷な環境下、隊員同士はもちろん、警察や自治体とも連携して救援作業にあたることになります。
そのため、技術力・運転操作技量・忍耐力・協調性に優れた経験豊富な隊員を全国のロードサービス隊の中から選抜し、特別支援隊員に任命しています。
引用元:同上
通常のロードサービスなら、1件対応したら事務所に戻れます。
でも災害派遣は違います。
何日も、場合によっては何週間も現地に留まり、連続して作業を続ける。
ライフラインが寸断された環境で、簡易トイレを使い、簡易ベッドで寝て、備蓄食品を食べる。
それでも笑顔で被災者に接する。
これは並大抵の精神力ではできません。
ここで、過去に書いた「夜間・雨天時の視認性。隊員に選ばれる『疲れない』高視認性安全服の選び方」でも触れましたが、災害現場では視認性の高い安全服が特に重要です。
瓦礫の中、夜間の作業、後続車からの視認性。
すべてが命に関わります。
5. 民間レッカー会社も災害支援に参加できる
JAFだけでなく、民間のレッカー会社も災害支援に参加しています。
実際、私の知人の会社も東日本大震災で福島に派遣されました。
ただし、民間会社が災害派遣に参加するには、事前の準備が必要です。
まず、自治体や警察との連携体制を構築しておくこと。
災害時に「手伝いたい」と申し出ても、指揮命令系統がなければ現場は混乱します。
平時から協定を結んでおく必要があります。
次に、隊員の訓練。
通常のレッカー作業とは全く異なるスキルが必要です。
横転した車両の扱い、複数台が絡み合った事故車両の分離、危険物を積んだ車両の移動。
これらは特別な訓練なしにはできません。
そして、装備の準備。
災害現場では、通常の工具だけでは対応できません。
発電機、電動カッター、防護服、簡易トイレ、食料、水。これらを常備しておく必要があります。
「クラウド型配車システムの導入比較。手書きの伝票から卒業して得られる時間的価値」で紹介したような業務効率化も、災害時には重要です。
限られた時間で最大の効果を出すには、平時からの準備が不可欠です。
6. 災害派遣の「見えないコスト」
災害派遣は、ボランティアではありません。
民間レッカー会社が参加する場合、当然コストが発生します。
隊員の人件費、車両の燃料費、装備の準備費、宿泊費(簡易ベッドでも)
これらすべてが会社負担になるケースもあります。
行政から委託される場合もありますが、金額は通常のロードサービスより安いことが多い。
「社会貢献」という名目で、利益度外視での活動を求められることもあります。
それでも多くのレッカー会社が災害派遣に参加するのは、「困っている人を助けたい」という使命感からです。
実際、東日本大震災で派遣された知人の隊員はこう語りました。
「お金の話じゃない。あの光景を見たら、何もせずにはいられなかった」
7. まとめ:災害時、レッカー車は命の道を開く
災害派遣の最前線で、レッカー車は3つの役割を果たしています。
- 道路をふさぐ被災車両の排除(東日本大震災では4,554台)
- 被災者からの救援要請への対応(台風19号では10,720件)
- 被災車両の無料点検サービス
JAF-FASTのような即応支援チームは、全国2000名の隊員のうち、わずか1%の精鋭。
現場で宿営しながら、連続して作業を続けます。
民間レッカー会社も、事前の準備と訓練があれば、災害支援に参加できます。
社会貢献であり、同時に業界全体の使命でもあります。
「ロードサービス求人で『応募ゼロ』から脱却する」で書いたように、ロードサービスの仕事は「困っている人を助ける仕事」です。
それは平時だけでなく、災害時も変わりません。
次に大きな災害が起きたとき、全国のレッカー車が被災地に集まります。
彼らが開いた道を、救援物資を積んだトラックが通ります。
レッカー車は、命の道を開いているんです。