もくじ
1. 「この車、開けられません」という絶望
深夜の高速道路、依頼者から連絡がありました。
「車内にスマートキーを閉じ込めてしまった。早く開けてほしい」
現場に到着して車種を確認した瞬間、背筋が凍りました。
2023年式のレクサスLS。
最新のセキュリティシステムを搭載した高級車です。
従来のスリムジムやピッキングツールは一切通用しません。
レッカー業界で15年、最も頭を悩ませるのが「最新車種のキー閉じ込み」です。
従来の解錠技術が全く役に立たない。
しかも、JAFの調査によると、2023年度だけでキーの閉じ込みで12万件以上の出動がありました。
引用元:JAF「スマートキーが主流なのに、なぜキーの閉じ込みが起こるのですか?」
スマートキーが普及しても、閉じ込みトラブルは減っていないのです。
2. スマートキーでも閉じ込みが起きる5つの原因
「スマートキーなら閉じ込みは起きないはず」
そう思っていませんか?
実は違います。
原因1:荷室での閉じ込み
荷室についてはキーを置いたままにしても、警報音が鳴らない車種もあります。また、キーにある開閉ボタンでトランクリッドやリアゲートを開け、荷室内にキーを置いたまま閉めてしまうと、ドアは解錠されていないので、キーを閉じ込めてしまうことになります。
引用元:JAF(同上)
原因2:電池切れ
スマートキーの電池が消耗していたり、電池が切れていたりすると、車がキーの存在を検知できなくなり、ロックされてしまうことがあります。
原因3:電波の遮断
キーが車内にあっても、インパネ上やドアポケット内など、場所によっては車外にあると検知されてドアがロックされ、キーの閉じ込めになるおそれもあります。
引用元:JAF(同上)
原因4:自動施錠機能
スマートキー搭載車は、スマートキーのボタンで解錠しても一定時間ドアを開けずにいると自動的に施錠される防犯対策が施されています。
原因5:電波干渉
発電所や電波塔などの近くで強い電波の干渉を受けることがあります。
すると、スマートキーが誤作動を起こし、意図せずロックがかかる場合もあるので注意が必要です。
3. 最新車種が「ピッキング不可」な理由
では、なぜ最新車種は従来の方法で開けられないのか。
理由は主に3つあります。
理由1:物理的な鍵穴がない
最新のスマートキー搭載車では、ドアに物理的な鍵穴がない車種が増えています。
緊急時用に隠された鍵穴があっても、特殊な工具なしでは開けられません。
理由2:スリムジムが通用しない
従来はドアとガラスの隙間から「スリムジム」という工具を挿入して解錠していました。
しかし、最新車種はドアの構造が変わり、スリムジムが届かない位置にロック機構があります。
理由3:セキュリティアラーム
物理的に開けようとすると、セキュリティアラームが作動します。
これが鳴ると、車両の電子システムがロックされ、さらに解錠が困難になります。
4. レッカー業者が取るべき3つの対処法
では、最新車種のキー閉じ込みに、どう対応すればいいのか。
現場で使える3つの対処法をご紹介します。
対処法1:スペアキーの確認
まず、依頼者にスペアキーの有無を確認します。
自宅にスペアキーがあれば、それを持ってきてもらうのが最も確実です。
ただし、自宅から遠く離れた場所でのトラブルの場合、時間がかかります。
依頼者に「スペアキーを取りに帰る時間」と「専門業者を呼ぶ費用」を天秤にかけて判断してもらいます。
対処法2:ディーラーへの連絡
最新車種の場合、メーカーのディーラーに連絡するのが最も安全です。
ディーラーには車種ごとの解錠マニュアルがあり、車両を傷つけずに開けられます。
ただし、ディーラーの営業時間外や、遠隔地の場合は対応が難しいこともあります。
対処法3:専門の鍵業者への外注
レッカー業者だけでは対応できない場合、スマートキー対応の鍵業者に外注します。
鍵業者にインロックの解除を依頼したときの料金は、通常の刻みキーで8,000円から、スマートキーやイモビライザー内蔵型など電子機能が組み込まれた鍵の場合は多くの場合30,000円以上と高額になるようです。
レッカー業者としては、この費用を依頼者に事前に説明し、了承を得ることが重要です。
5. やってはいけない3つのNG行動
キー閉じ込みの現場で、絶対にやってはいけないNG行動があります。
NG行動1:針金やハンガーでこじ開ける
車のキーをインロックしてしまったとき、針金やハンガーを使って無理矢理こじ開けようとする方法は、非常にリスクが高いといえます。なぜならこの方法は、車のドアや鍵穴を傷つける可能性が高く、結果的に修理費用がかさむ原因となるからです。
NG行動2:窓ガラスを割る
窓ガラスを割る手段は炎天下で子供が車内に閉じ込められているなどの極めて緊急の事態に限られるべきです。危険性が高く、その後の修理に高額な費用が発生するため、単に早く開けたいだけの場合はロードサービスや鍵屋の利用を検討する方が賢明です。
引用元:さかえロック「車が開かない…!インロック時の対処法」
NG行動3:力任せにドアを開けようとする
ドアを力任せに引っ張ったり、工具で無理やり隙間を広げようとすると、ドアフレームが歪み、修理費用が数十万円になることもあります。
6. スマートキー紛失への対応
閉じ込みではなく、スマートキーそのものを紛失した場合、さらに対応が複雑になります。
ステップ1:車両の確認
まず、車両が解錠されているか、施錠されているかを確認します。
解錠されていれば、車を牽引してディーラーに運びます。
施錠されている場合は、鍵業者に依頼して解錠した後、牽引します。
ステップ2:スマートキーの作成
スマートキーの作成費用は車種や年式により異なりますが、おおよそ4万5,000円から5万5,000円です。
また、スマートキーを作成しただけでは使用できないため、新しいスマートキーの登録・再設定も必要となります。
引用元:NEXTAGE「車のスマートキーを閉じ込めてしまう原因」
ステップ3:依頼者への説明
スマートキーの作成には、時間と費用がかかることを依頼者に丁寧に説明します。
「今すぐ乗りたい」という要望には応えられないことを、事前に理解してもらいます。
ここで、事故現場の記録という観点では、以前ご紹介した「スマホ一つで事故現場の全景を撮る。
保険会社に『一発OK』をもらう写真の撮り方」も参考になります。
キー閉じ込みの現場でも、車両の状態を写真で記録しておくことで、後のトラブルを防げます。
7. 予防策を依頼者に伝える
レッカー業者として、依頼者に予防策を伝えることも重要です。
予防策1:スマートキーを常に携帯
車のインロックを防ぐ最も簡単で効果的な方法は、車に乗るときにスマートキーを必ず携帯することでしょう。
短時間であってもいっしょに乗車し、いっしょに降車するつもりで携帯します。
予防策2:年1回の電池交換
インロック防止として、電池切れを避けるための年に一度の電池交換が効果的です。
一般的には電池の持続期間は1から2年ですが、使用頻度や保管環境によって異なるため、この期間は目安として考えることが大切です。
引用元:さかえロック(同上)
予防策3:スペアキーの携帯
スマートキーではないスペアキー(物理キー)をカバンや財布に入れて持ち歩くなどの対策もあります。
引用元:JAF(同上)
8. まとめ:最新車種時代の対応力
スマートキーの普及により、キー閉じ込みの性質が変わりました。
従来のピッキング技術は通用せず、専門業者との連携が不可欠になっています。
レッカー業者として取るべき対応は5つです:
- スペアキーの有無を必ず確認する
- ディーラーや専門業者との連携体制を整える
- 費用を事前に説明し、依頼者の了承を得る
- 針金やハンガーでの強引な解錠は絶対にしない
- 依頼者に予防策を伝える
2023年度だけで12万件以上のキー閉じ込みが発生しています。
この数字は、決して減っていません。
スマートキー時代だからこそ、レッカー業者は新しい対応力が求められています。
あなたの会社では、スマートキー対応の鍵業者との連携体制がありますか?
もしまだなら、今すぐ複数の業者と連絡先を交換しておいてください。
次の依頼が、最新のレクサスやテスラかもしれません。
その時、「開けられません」とは言えないのです。