「ロードサービスに興味はあるけれど、将来が不安だ」
「自動運転で事故が減れば、仕事がなくなるのではないか?」
今、この業界への転職を考えている方の中には、このような疑問を抱いている方も多いのではないでしょうか。
確かに、ニュースを見れば「自動ブレーキの普及で事故減少」「EV(電気自動車)シフト」といった話題が溢れています。
「車が壊れなくなり、事故も起きない」
こんな未来が訪れたら、レッカー移動や救援を行うロードサービスの需要は消滅していくのかな?
もし先細りする業界だとしたら、転職先としては危ういのかな?
そう考えるのは無理もありません。
しかし、結論から申し上げますと、その心配は無用です。
むしろ、車がハイテク化するこれからの20年こそ、専門知識を持ったロードサービス隊員の価値は高騰し、「単なる力仕事」から「高度な技術職」へと進化する面白い時代が到来しようとしています。
今回は、ロードサービス会社の現役社長へのインタビューと、最新の業界研究レポートをもとに、なぜこの仕事が「将来的にも安定かつ有望」と言えるのか、その理由を紐解いていきます。
もくじ
1. 自動運転になれば「事故ゼロ=仕事ゼロ」ではない
まず、多くの人が抱く「安全機能が発達すれば仕事がなくなる」という誤解についてです。
確かに、衝突被害軽減ブレーキなどの普及により、単純な追突事故などは減少傾向にあります。
しかし、ロードサービスの現場では、出動件数が減るどころか、むしろ対応の難易度が上がっているのが実情です。
業界の最前線に立つロードサービス会社の社長は、インタビューでこう語っています。
「将来不安になるかと言えば、今後20年、30年は安泰であろうと言われています。結局、AIや自動運転が発達して事故が減ったとしても、『故障』は増えているんです。」
なぜ、安全な車が増えているのに「故障」は増えるのでしょうか?
社長は、その本質をシンプルかつ力強い言葉で表現しました。
「EVになろうが何になろうが、タイヤがついて転がる以上は、需要はなくなりません。」
2. ロードサービス需要は減るのではなく変化する
ロードサービスの需要は、ざっくり言うと次の掛け算です。
- 車の台数(走っている母数)
- 止まる確率(事故・故障・トラブル)
- 自力復帰できない度合い(その場で直るか/運べないとダメか)
ここで大事なのは、事故が少し減ったとしても、「故障の中身が変わる」「自力復帰できないケースが増える」なら、出動はゼロにはならないという点です。
車が空を飛ばない限り、物理的に地面と接しているのはタイヤです。
そして車が走る限り、タイヤは摩耗し、パンクもします。
さらに、システムが高度化すればするほど、センサーの故障や電子制御のトラブルなど、昔の車にはなかった「動けなくなる原因」が新たに生まれています。
「事故が減る」ことは社会にとって良いことですが、それは「ロードサービスの仕事がなくなる」ことと同義ではありません。
むしろ、「事故対応」から「高度な故障対応」へと、求められる仕事の中身が変わりつつあるのです。
3. なぜEV時代に「パンク」と「バッテリー上がり」が急増するのか?
「EVは部品点数が少ないから壊れにくい」という話を聞いたことがあるかもしれません。
エンジンのような複雑な機構がないため、オイル交換などのメンテナンスは確かに減ります。
しかし、ロードサービス業界の研究データを見ると、EVならではの新たなトラブルが急増していることがわかります。
これには、大きく2つの物理的な理由があります。
1.「車の体重」が激増している
EVは、床下に巨大なリチウムイオンバッテリーを積んでいます。
これにより、同クラスのガソリン車に比べて車両重量が300kg〜500kgも重くなる傾向があります。
人間で例えるなら、常に重いリュックを背負って走っているようなものです。
当然、足元である「タイヤ」への負担は激増します。
- 摩耗の早さ: 重い車体を支え、電気モーターの強力なトルク(瞬発力)が加わるため、タイヤの減りが早い。
- パンク時のダメージ:重さゆえに、釘が刺さった程度のパンクでもタイヤ内部構造が破壊されやすく、現場での修理が困難(レッカー搬送が必須)になるケースが多い。
タイヤトラブルは増えており、レッカー移動の需要もあります。
参照:ロードサービス業界で進む電動車対応 EV普及で新たな技術習得必須に
2. ハイテクゆえの「12Vのパラドックス」
EVに乗っていない方には意外かもしれませんが、実はEVにもガソリン車と同じ「12Vバッテリー(補機バッテリー)」が搭載されています。
巨大な駆動用バッテリーが「走るためのエネルギー」なら、12Vバッテリーは「車の頭脳(システム)を目覚めさせるための電源」です。
ここにEV特有の落とし穴があります。
たとえ駆動用のメインバッテリーが満タンでも、小さな12Vバッテリーが上がってしまうと、システムが起動せず、ドアのロックすら開かなくなるのです。
EVは常に通信を行ったり、バッテリーを管理したりするために待機電力を使っています。
しばらく乗らないだけで「ただの巨大な鉄の箱」と化してしまうこのトラブルは、JAFなどの統計でも出動理由の上位を占めています。
つまり、車がEVになっても「パンク」や「バッテリー上がり」というロードサービスの二大案件はなくならないどころか、「重くて動かせない」「システムが複雑」という要素が加わり、プロの助けがより一層必要とされているのです。
参照:JAF、BEV充電サービスの実証実験を全国47都道府県へ拡大 ~BEVトラブルの約11%は電欠、ロードサービス現場での対応を強化~ | JAF
4. 「レッカー屋」だけではなく「移動技術者」への進化が求められる
かつてロードサービスといえば、「力持ちのお兄さんが来て、チェーンで引っ張ってくれる」というイメージだったかもしれません。
しかし、これからの時代はそれだけではなくなります。
求められるのは「モビリティシステムを正常化する総合的な技術サービス(移動技術者)」としてのスキルです。
社長へのインタビューでも、テスラなどの最新車種について「恐ろしいです、本当に」と、その進化の速さに苦笑する場面がありました。
例えば、最新のEVが電欠や故障で止まった場合、タイヤがロックされて動かなくなることがあります。
シフトレバーもなく、画面操作でしかニュートラルに入れられない車も増えています。
これからのロードサービス隊員には、以下のような新しいスキルが求められます。
- デジタルリテラシー:
スマホやタブレットを使いこなし、車の隠しコマンドのようなメニューから「牽引モード」への切り替えを行う。 - 特殊機材の操作:
ロックされたタイヤの下に潜り込ませる最新の「ドーリー(台車)」など、重量級の車を傷つけずに運ぶための専門機材を扱う技術。 - 高電圧の知識:
感電事故を防ぎながら安全に作業するための、電気自動車取扱いの資格や知識。
「ただ運ぶだけ」の仕事であれば、確かに将来AIや自動運転ロボットに取って代わられるかもしれません。
しかし、「現場で状況を判断し、複雑なシステムを解除し、安全に排除する」という高度な対応は、人間にしかできません。
今回お話を聞かせていただいた社長が「歩合ではなく、基本給を上げていっている」と語っていたのも印象的です。
これは、単に件数をこなす体力勝負の仕事から、知識と技術を持った社員を長く大切にする「安定した専門職」へと会社の体制自体が変化していることの表れと言えるでしょう。
実際、ドイツの調査でもEVは壊れにくい傾向がある一方、台数増で出動は増え得る、というデータが出ています。
参照:ADAC Pannenstatistik 2025: Elektroautos zuverlässiger als Verbrenner
5. アメリカの事例から見る「近未来の働き方」
少し先の未来を見てみましょう。
自動運転技術が進んでいるアメリカでは、すでに「無人タクシー」が街を走っています。
では、その無人タクシーが路上で故障してしまったら、誰が助けるのでしょうか?
答えは、「ロードサービス隊員」です。
アメリカの事例では、無人車がトラブルで立ち往生した際、駆けつけたレッカー隊員が遠隔管制センターと通話しながら、車両のシステムをシャットダウンし、搬送作業を行っています。
車の中にドライバーがいなくても、現場の安全を確保し、物理的に車を移動させる「最後の手」は、いつの時代も人間なのです。
例えば、自動運転車とのコミュニケーションを具体的に考えてみましょう。
ドライバーがおらず、窓もドアも施錠された車両に対し、どのようにアプローチするのか想像してみてください。
従来の「キーを貸してください」「ハンドルを切ってください」と話しかけることはできません。
これまでとは違う方法を取る必要がありますし、反応しない動かない鉄の塊に対して、なかなか難しい局面がありそうですよね。
EVや自動運転が普及すればするほど、現場での対応はマニュアル通りにはいきません。
「AIが判断を誤って止まってしまった車を、どうやって安全な場所まで運ぶか?」
そんな、まるでSF映画のようなシチュエーションが、これからのロードサービスの現場では日常になっていくのかもしれません。
6. まとめ:変化を楽しめる人こそ、この業界へ
「ロードサービスは安定した職業なのか?」
この問いへの答えは、「イエスであり、同時に進化し続ける職業である」です。
道路があり、タイヤが転がっている限り、需要がなくなることはありません。
しかし、その中身は「力仕事」から「知識と技術を駆使するプロフェッショナルな仕事」へと急速に変わりつつあります。
ロードサービスは、今後も学ぶ人が評価されやすい、伸びしろのある仕事です。
この変化を「難しい」と捉えるか、「面白い」と捉えるか。
「手に職をつけたい」
「新しい技術に触れるのが好きだ」
「困っている人を助ける仕事に誇りを持ちたい」
もしあなたがこのように感じるなら、今のロードサービス業界は十分に検討する対象と言えるでしょう。
車は進化しています。
そして、それを支えるロードサービスもまた、進化しています。
過去のイメージにとらわれず、新しい時代の「道路の安全を守るエキスパート」として、この業界に飛び込んでみてはいかがでしょうか。