深夜の高速道路、タイヤがパンクした。慌ててスマホで「レッカー 緊急」と検索。
一番上に表示された業者に電話した。
「すぐ行きます、基本料金は4,400円です」
30分後、作業が終わって請求された金額は24万円。
「え、聞いてた話と全然違う…」
こんな被害が、今この瞬間も全国で起きています。
2021年末から急増し、東海4県だけで100件を超えるトラブルが報告されています。
引用元:中日BIZナビ「レッカー移動で40万円?法外請求トラブル相次ぐ」
レッカー業界に15年いる私も、この問題には心を痛めています。
真面目に仕事をしている業者まで「レッカーはぼったくり」と思われてしまう。
この状況を変えなければ、業界全体が沈んでいきます。
もくじ
1. ぼったくりレッカーの実態
愛知県の40代男性のケースを見てみましょう。
家族が運転するバイクが夜間に事故に遭い、慌ててレッカー移動サービスを探しました。
スマートフォンの検索サイトで一番上に表示されたサイトの業者に電話をすると「作業用車1台で対応すれば3万円。
1キロごとの搬送費用が650円」などと説明されました。
男性は「費用は5万〜10万円ほど」と認識しました。
病院などへ行った後、事故現場に戻って業者から請求された金額は40万円。
事前説明になかった5万円の交通誘導費や夜間割増料金などが並んでいました。
引用元:同上
JAFによるレッカー作業の相場は2万〜3万円ほど。
なのに40万円。
13倍以上です。
2. 悪質業者の手口
悪質なレッカー業者は、一般的な相場を無視した法外な料金を提示してきます。
消費者が予めレッカーサービスの料金相場を知らないことを利用して、実態と言うにはあまりにもかけ離れた価格を請求されるケースが多いのです。
具体的な手口は4つあります。
手口①:ネット広告で「格安」を装う
ホームページには「タイヤパンク4,400円から」と書いてある。
でも、これは基本料金だけ。
現場で「追加作業費」「交通誘導費」「夜間割増」などを次々と上乗せします。
浜松市であったケースでは、被告の会社のウェブサイトには「タイヤパンク4,400円から」と書かれていました。
でも最終的に24万円を請求されました。
手口②:キャンセル料の脅し
保険会社のレッカーを使用するためキャンセルをしたところ、高額なキャンセル料を請求されました。
「今キャンセルしても15万かかる」と言われ、仕方なく作業を依頼してしまう。
手口③:ATMへの同行強要
「今は手持ちがないため支払うことができない」と伝えたところ、ATMまで連れていかれ、支払いを強要されました。
実際のケースでは、「コンビニでお金おろして、支払い」という状況に追い込まれています。
手口④:虚偽の保険提携
「○○保険会社と提携している、全額保険会社から支払いを受けられる」と虚偽の説明をされ、自己負担が発生しました。
引用元:株式会社経営サポート「高額レッカー業者によるトラブルに注意」
保険会社に確認したら「その業者は提携してなくて、お金も戻らないことが判明」というパターンです。
3. なぜ検索上位に表示されるのか
「検索で一番上に出てきたから信用した」
被害者の多くがこう語ります。
でも、検索上位=信頼できる業者ではありません。
ネット検索で表示された上位のサイトからサービスを依頼して高額請求されるケースが後を絶たない。
こうした業者は、入力したキーワードに連動して検索結果画面に表示される「リスティング広告」を利用しているとみられます。
引用元:中日BIZナビ(同上)
リスティング広告は、広告主が検索サイト側に支払った広告料などで表示順が決まります。
つまり、お金さえ払えば一番上に表示できるんです。
「検索で上部に表示されなかったら信頼していない。検索サイトにもだまされたような気持ちだ」
被害者の言葉です。
4. 業界全体が失う信頼
この問題の深刻さは、被害額だけではありません。
業界全体の信頼が失われているんです。
「レッカー=ぼったくり」というイメージが定着すれば、真面目に仕事をしている業者まで疑いの目で見られます。
適正な価格で誠実にサービスを提供している会社が、同じ土俵で比較されてしまう。
実際、「レッカーを呼ぶのが怖い」という声も聞かれます。
本来なら助けを求めるべき状況で、誰にも連絡できずに危険な場所に留まる。
これは社会全体の損失です。
5. 適正価格の目安
では、適正な価格はいくらなのか。
JAFの料金を見てみましょう。
JAF会員の場合:
- 基本料:無料
- けん引料:15kmまで無料、15km超過1kmごとに730円
JAF非会員の場合:
- 基本料:8時〜20時8,380円、20時〜8時10,480円
- けん引料:1kmごとに730円
引用元:ファイナンシャルフィールド「高額請求などトラブルに注意!」
つまり、非会員でも10km移動で1万5千円〜2万円程度。
これが相場です。
6. 真面目な業者ができること
では、真面目に仕事をしている業者は、どうすればいいのか。
業界の自浄作用として、5つの提案があります。
提案①:料金の事前明示
Webサイトに料金を明記するだけでは不十分です。
「基本料金」だけでなく、「追加料金が発生する場合」「夜間割増の有無」「キャンセル料」すべて明記する。
さらに、電話で依頼を受けた時点で、概算見積もりを伝える。「お客様の状況ですと、おおよそ2万円から3万円になります」と。
提案②:作業前の書面同意
現場に到着したら、作業前に必ず書面で見積もりを提示する。
そして、依頼者のサインをもらってから作業を開始する。
「作業が終わってから請求書を見せる」では遅い。
事前に納得してもらうことが大切です。
提案③:業界団体による認証制度
全国の真面目なレッカー業者が集まって、認証制度を作る。
厳しい基準をクリアした業者だけが「認証マーク」を掲示できる。
水道工事業界では、同様の問題に対して業界団体が動き始めています。
レッカー業界も同じことができるはずです。
提案④:保険会社との連携強化
保険会社のロードサービスと提携する業者を増やす。
そして、「保険会社推奨業者」という形で、安心できる業者を可視化する。
三井住友海上などの保険会社は、すでに注意喚起を始めています。
次のステップは、「推奨業者リスト」の公開です。
引用元:三井住友海上「一部のレッカー業者からの高額請求トラブルにご注意」
提案⑤:被害者救済の仕組み
万が一、高額請求の被害に遭った人がいたら、業界として救済する仕組みを作る。
具体的には、消費者センターと連携して、クーリングオフの適用を支援する。
特定商取引法に基づくクーリングオフで契約を解除することを業者に伝えれば、返金される可能性があります。
7. 利用者が自衛する方法
業界の自浄作用と同時に、利用者側も自衛が必要です。
自衛策①:保険会社に最初に連絡
車のトラブルが起きたら、まず保険会社に連絡してください。
最近ではロードサービスが付帯されている保険が多く、保険会社で手配してもらえます。
自衛策②:格安をうたう業者に注意
業者のサイトに表示されている料金が、現場での人件費にも満たないような格安で表示してある場合は「事前の説明と違う請求があるのでは」と疑う意識が重要です。
引用元:中日BIZナビ(同上)
自衛策③:事前に相場を知る
JAFのロードサービス料金を事前に確認しておく。
そうすれば、20万円の請求を受けたときに「おかしい」と気づけます。
8. まとめ:業界全体で守るべきもの
「ネットで呼んだら20万請求された」
こんな被害者を二度と出さないために、業界全体が動く必要があります。
悪質業者を野放しにすれば、業界全体が沈みます。
真面目に仕事をしている業者こそ、声を上げるべきです。
料金の透明化、事前見積もりの徹底、業界認証制度の確立。
これらを実現すれば、「レッカー=ぼったくり」というイメージを払拭できます。
そして、困っている人を助けるという、本来のロードサービスの役割を取り戻せます。
レッカー業界に携わる全ての人へ。
今こそ、業界の自浄作用を発揮する時です。