深夜の事務所。
ひとり静かになった時間に、山積みになった燃料の請求書と、整備工場からの見積書を突き合わせてみる。
「今月も現場はパンパンだった。休みなしで回したはずだ……」
それなのに、残る利益があまりに薄くて、思わず電卓を叩く手が止まる。
そんな経験、ありませんか?
「とにかく走れば金になる」 そんな時代は、もうとっくに終わりました。
2026年、高騰し続ける機材代、跳ね上がる人件費、そして高止まりする燃料。
今、私たちが向き合うべきは、レッカーの腕前以上に、1台の車が動くたびに発生する「残酷な数字」です。
もくじ
1. 「出動すればするほど赤字」という、笑えない冗談
ロードサービスという仕事は、不思議な商売です。
車が動けば売上が立つ。
だから、配車が入れば喜んで現場へ向かう。
でも、その1回の出動、実は「利益」ではなく「赤字」を運んでいませんか?
例えば、1台2,000万円を超えた最新の積載車。
ローン、任意保険、駐車場代、そして税金。
エンジンを止めて事務所に置いているだけで、毎日1万円札がヒラヒラと飛んでいく計算になります。
これが「固定費」という名の、逃げられない重石です。
引用元: 「経営分析報告書(原価管理編)」(公益社団法人 全日本トラック協会)
全日本トラック協会が公表しているコスト分析を見ても、車両1台を維持するためにかかる「固定費(走らなくてもかかる金)」の負担は、近年の車両価格高騰と保険料アップで、かつてないほど膨れ上がっています。
これを私たちの現場に当てはめてみてください。
もし、月に10回しか動かない車があるとしたら、その1回の出動には「維持費だけで3万円」のコストが最初から乗っていることになります。
そこに高騰した燃料代と、隊員への人件費を足したら……。
現場に着いて、お客様に「お待たせしました!」と笑顔で挨拶した瞬間、実はすでに数千円、あるいは1万円近い「赤字」からスタートしている。
そんな恐ろしい現場が、あなたの会社にも紛れ込んでいませんか?
2. 24時間営業という「プライドの代償」
「24時間、いつでも駆けつけるのがレッカー屋の誇りだ」 その心意気は素晴らしい。
でも、夜中の3時に1件のパンク救援のために、隊員を1人待機させておく「コスト」を直視したことはあるでしょうか。
深夜手当、光熱費、そして何より「隊員の疲弊」。
夜間の出動が月に数件しかないのなら、その数件のために、昼間の稼ぎ頭たちが稼いだ利益をドブに捨てているのと同じです。
「断るのは申し訳ない」という社長の優しさが、実は会社という船の底に少しずつ穴を開けている。
これが、稼働率に隠された「残酷な真実」です。
3. 2026年、生き残るための「数字のメス」
もし計算してみて「このままじゃマズい」と気づいたら、やるべきことはたった2つ。
これまでの「当たり前」を捨てる覚悟が必要です。
① 「下請け単価」に命を預けない
アシスタンス会社から提示される単価を、そのまま受け入れていませんか?
「うちはこの金額でやってきたから」という言葉は、倒産への片道切符です。
「今の維持費では、この単価では隊員の安全すら守れません」と、具体的な数字を持って交渉のテーブルにつきましょう。
2026年の今、正当なコストを請求するのは、経営者としての「義務」です。
② 「稼働率」という幻想を捨てる
「10台あるから10台全部動かさなきゃ」と思わなくていいんです。
稼働率の低い車は思い切って処分する、あるいは夜間だけは他社と提携して「持ちつ持たれつ」で回す。
一台あたりの出動密度を極限まで高め、1台が叩き出す利益を最大化する。
「車を減らすのは負けだ」というプライドを捨てた会社から、キャッシュが残り始めます。
4. 最後に:計算機を持つことは、隊員を守ること
「数字、数字って、俺たちは算数をしてるんじゃねぇ、現場を助けてるんだ」
そう言いたくなる気持ちもわかります。
でも、社長が数字を冷徹に見つめるのは、現場の熱意を冷ますためではありません。
利益が出るから、隊員に胸を張って給料を払える。
利益が出るから、最新の安全装備を備えた車を買ってあげられる。
そして、社長自身が「明日もこの商売を続けていける」と確信できる。
計算機を持つことは、冷酷になることではありません。
あなたの会社に関わるすべての人を、路頭に迷わせないための「愛」なんです。
まずは今夜、一番古い積載車の「月間コスト」を書き出してみてください。
その数字が、あなたの会社を次の10年へと導く、本当の「ロードマップ」になるはずです。