未経験から一人前まで、2〜3年で何をするのか
前回、「夜勤は一人で何でもできるようになるまでお願いしません。目安は2〜3年後です」と書きました。
では、その2〜3年で何をしているのか。
今回はそこを書きます。
実は先日、社内で新入社員の研修カリキュラムを作り直しました。
まだ最終確認の途中ですが、考え方の部分だけ先にお話しさせてください。
事故が一番多いのは基地の構内です
ロードサービスの事故と聞くと、多くの方は高速道路の救援現場を思い浮かべると思います。
現場が危険なのはその通りで、安全確保の手順は徹底して教えます。
ただ、実際に事故が起きやすいのは基地の構内です。
帰着してほっとした瞬間や、朝一番の出発時に起きます。
緊張が緩む場面です。
積載車やレッカー車は車体が長く、後部の振り出し(オーバーハング)が大きい。
慣れた場所ほど、確認が甘くなります。
この構造を知らないまま車に乗せると、どこかでぶつけます。
人が怪我をすることもある。
だから今回のカリキュラムは、構内の安全を最初に教えることから組み直しました。
最初の1ヶ月、助手席で何をしてもらうか
入社して最初の1ヶ月は、積載車の助手席に乗ってもらいます。
いわゆる横乗りです。
ただ、座って見ているだけの1ヶ月にはしません。
- 後退するときは、先に降りて車の後ろに回り、誘導する
- 出発前に周囲を確認し、輪止めを外す
- 駐車したら輪止めを設置する
- 現場では発炎筒や三角表示板を置き、後方を警戒する
初日から、安全確保の担い手として動いてもらいます。
誘導、輪止め、周囲確認。
この3つを体に染み込ませることが、最初の1ヶ月の目的です。
技術はあとから覚えられますが、安全の習慣は最初につけないと一生つきません。
運転は二の次です。
期間の後半に、指導員が大丈夫と判断すれば運転を始めてもよいことにしていますが、焦らせません。
昇格試験の中身
横乗りが終わったら、次はサービスカーでの単独業務です。
そこから積載車、小型レッカー、中型、大型と進みます。
各段階の間に、昇格試験があります。
試験は3つの要素で構成しています。
学科試験では、次のようなことを聞きます。
- バッテリーの接続順序
- ハイブリッド車とEV車の注意点
- タイヤ交換の手順
- 高速道路上での退避原則
積載車の段階では、自分が乗る車の全長と全幅、ホイールベース、リアオーバーハング長を数値で答えてもらいます。
ここは暗記必須です。
自分の車の寸法を知らない人間が、狭い場所でハンドルを切っていいはずがありません。
実技試験は、保護具の着用から始まります。
- 現場到着時の安全確保の一連動作
- 路肩規制の実演
- スペアタイヤ交換
- 積載車の段階では、ウインチでの積み込みと固縛、狭路走行、車庫入れ
実際にポールを立てて、後部がどれだけ振り出すかを自分の目で確認してもらいます。
数字で覚えた寸法が、目の前で形になる瞬間です。
同乗評価は、指導員が日常業務のなかで見ます。
安全確認が習慣になっているか。
報連相ができているか。
そして、無理をせず応援を呼べるか。
なかでも見ているのは、最後の項目です。
一人で抱え込んで失敗する人より、早い段階で「助けてください」と言える人のほうが、結果的に伸びます。
技術だけでは合格しません
作業前に会社名を名乗る。
お客様の車に乗り込む前に、貴重品の有無を確認して取り出しをお願いする。
車両の状態やキズをお客様と一緒に確認し、その場で報告書に記録する。
作業手順を説明して、理解を得てから始める。
これらをロールプレイで試験します。
貴重品の確認や報告書への記録が抜けていれば、合否に関わります。
お客様は、車が動かなくて困っている状態で私たちを待っています。
不安なところに説明もなく作業を始められたら、その時点で印象は決まってしまいます。
だから試験項目に入れています。
落ちても、何度でも受け直せます
試験と聞くと不安になる方もいると思います。
不合格でも、何度でも受け直せます。
回数制限はありません。
不合格になった場合は、指導員のもとで2週間の練習期間を設けます。
その上で再受験。
できるようになるまで付き合います。
試験は、ふるいにかけるための仕組みではありません。
まだ危ない状態の人を、危ない車に乗せないためのものです。
早く上の車に乗りたい気持ちは分かります。
私もそうでした。
ただ、準備ができていない状態で乗って事故を起こせば、失うもののほうがはるかに大きい。
最後に一つ。
ここまで書いた仕組みは、まだ完成していません。
期間も、試験の中身も、これから変わります。
社内では今もたたき台の段階で、現場から意見をもらいながら詰めているところです。
朝決めたことが夕方には変わっている。
そんな会社に見えるかもしれません。
ただ、変えるのは働く人が安全に技術を身につけられるようにするためです。
現場を一番よく知っているのは、実際に車に乗っている人間です。
「この期間は長すぎる」「この項目は現場と違う」という声があれば直します。
車も変わります。
ハイブリッドやEVが増えて、覚えることは10年前とまったく違う。
固めてしまった仕組みは、そこで止まります。
これから入ってくる方と一緒に、もっといいものに磨き上げていきたいと思っています。