もくじ
1. 「レッカー車、待機中ばかりで勿体ない」
先月、あるレッカー会社の社長からこんな相談を受けました。「うちのレッカー車、出動するのは1日に2〜3回。残りの時間はずっと車庫で待機してる。車両の維持費は毎月かかるのに、稼働時間は1日の1割程度。なんとかならないか」
これ、レッカー業界共通の悩みです。24時間体制で待機しているけど、実際に稼働するのはほんの数時間。でも、固定費は容赦なく襲ってきます。
実は、この「待機時間」を収益に変える方法があります。それがレンタカー事業との兼業です。
2. レンタカー市場の急成長
まず、レンタカー市場の現状を見てみましょう。
矢野経済研究所によると、2023年のレンタカー市場規模は事業者売上高ベースで7,736億円。さらに、訪日外国人客の需要増加や、個人・法人の利用ニーズの更なる活性化が見込まれ、2030年には1兆826億円まで成長する見通しです。
引用元:矢野経済研究所「レンタカー&カーシェアリング市場に関する調査を実施(2023年)」
全国レンタカー協会の統計によると、2024年3月末現在の全国レンタカー車両数は109万5,711台。10年前の2014年統計では63万1,143台だったことを考えると、この10年で1.7倍以上に増大しています。
引用元:グーネット自動車流通「【特集】急拡大するレンタカー市場にビジネスチャンス」
市場は急成長しているんです。
3. なぜレッカー会社がレンタカーなのか
「でも、レンタカーって大手が強いんじゃないの?」そう思いますよね。
確かに、国内シェアはトヨタレンタリースが約32%、オリックス自動車が約15%、ニッポンレンタカーサービスが約12%と、大手が市場を押さえています。
引用元:日本経済新聞「レンタカー・カーリース業界 市場規模・動向や企業情報」
でも、大手にはできない地域密着型のサービスで、十分に勝負できます。
レッカー会社の強み
- すでに車両管理のノウハウがある レッカー車の維持管理をしているなら、レンタカーの管理も大差ありません。車検、整備、洗車。すべて社内でできます。
- 24時間体制の信頼性 深夜のトラブルにも対応できる体制。これは大手レンタカー会社にはない強みです。「レンタカーで事故を起こしたらどうしよう」という不安を、「この会社なら24時間サポートしてくれる」という安心感に変えられます。
- 保険会社との太いパイプ すでに保険会社と取引があるなら、代車としてのレンタカー提供がスムーズにできます。事故車両をレッカーで運び、その場で代車を提供。ワンストップサービスの完成です。
4. 遊休資産の活用 レッカー車の待機時間、空いている車庫スペース、事務員の手が空いている時間。これらすべてがレンタカー事業に転用できます。
4. 相乗効果の具体例
では、実際にどんな相乗効果が生まれるのか。具体的に見てみましょう。
パターン1:事故対応からのスムーズな代車提供
従来の流れ
- 事故発生→レッカー出動
- 顧客が自分でレンタカー会社を探す
- 顧客が移動して契約
- レッカー会社は出動料金のみ
兼業後の流れ
- 事故発生→レッカー出動
- その場で代車を提案
- 顧客は移動不要で代車を受け取る
- レッカー料金+レンタカー料金を受け取れる
パターン2:保険会社との新しい契約形態
保険会社からすると、「レッカー手配+代車手配」を1社で完結できるのは大きなメリット。手間が減り、顧客満足度も上がります。
多くのレッカー事業者は、アシスタンス事業に総件数の50%以上を依存していると言われています。
引用元:NCW(全国車載車・レッカー事業協同組合)「NCWとは」 https://ncw.or.jp/about/
この依存度をさらに高めつつ、単価を上げることができるんです。
パターン3:遊休車両の収益化
レッカー車は出動待機中は収益を生みません。でも、業務用ワゴン車や軽トラックは、レンタカーとして貸し出せます。
試算例(10台保有の場合)
- レッカー専用車:5台(従来通り)
- 兼用車両:5台(レッカーとしても、レンタカーとしても使える)
兼用車両を月10日レンタカーとして貸し出せば:
- 1日5,000円×10日×5台=月25万円
- 年間300万円の追加収益
5. 導入のステップ
「やってみたいけど、どこから始めればいいのか」。そんな声が聞こえてきそうです。
ステップ1:許可の取得
レンタカー事業を始めるには、自家用自動車有償貸渡業の許可が必要です。
2004年に「車両ごとの許可」から「事業の許可」へ改正されたことで、レンタカー事業への参入が相次ぎました。いわゆる保険代車などで用いられる自社レンタカーもこの頃からで、中古車販売店や自動車整備工場などでもレンタカー事業を手がけるところが増えました。
引用元:グーネット自動車流通「【特集】急拡大するレンタカー市場にビジネスチャンス」
申請には約1〜2ヶ月かかりますが、手続き自体は複雑ではありません。
ステップ2:車両の準備(3つの選択肢)
選択肢1:新規購入
- メリット:好きな車種を選べる
- デメリット:初期投資が大きい(1台200〜300万円)
選択肢2:中古車活用
- メリット:初期費用を抑えられる
- デメリット:故障リスクがある
選択肢3:既存車両の転用
- メリット:追加投資ほぼゼロ
- デメリット:レッカー業務と兼用なので稼働率に制限
小規模から始めるなら、選択肢3がおすすめです。
ステップ3:価格設定
大手と真正面から競争する必要はありません。
「ニコニコレンタカー」などの業者はフランチャイズ方式で郊外のガソリンスタンドに車両を置いており、中古車を活用することでコストを抑えています。レンタカー代金は大手業者の半額程度に抑え、新たな需要を開拓しています。
引用元:日本経済新聞「レンタカー・カーリース業界 市場規模・動向や企業情報」
レッカー会社の強みは、24時間サポート付きという付加価値。少し価格を上乗せしても、安心感で十分に勝負できます。
ステップ4:集客方法
- 既存顧客へのアプローチ 過去にレッカーサービスを利用したお客様に、「次回から代車もご用意できます」とDM。
- 保険会社との契約強化 「レッカー+代車」のセットプランを提案。保険会社の手間が減るため、喜ばれます。
- 地域の整備工場との連携 「車検中の代車をうちで」という提携。整備工場は車両を持つ必要がなくなります。
- Web予約システムの導入 若い世代はネットで予約します。簡単な予約サイトを作るだけで、集客力が変わります。
6. 失敗しないための注意点
注意点1:本業を疎かにしない
レンタカー事業に力を入れすぎて、レッカー業務がおろそかになっては本末転倒です。
対策:レンタカーの稼働状況を管理し、緊急出動時には必ずレッカー車が出せる体制を維持する。
注意点2:保険の見直し
レンタカー事業には、別途保険が必要です。賠償責任保険、車両保険をきちんと見直しましょう。
注意点3:清掃・メンテナンスの徹底
レンタカーは「清潔さ」が命。汚れた車を貸し出すと、口コミで一気に評判が落ちます。
返却後の清掃チェックリストを作り、徹底しましょう。
7. 実際の収益モデル
10台保有のレッカー会社が、5台をレンタカーと兼用にした場合の試算です。
初期投資
- 許可申請費用:約10万円
- 車両準備(既存車両転用):0円
- Web予約システム:月額2万円
- 合計:約30万円(初年度)
月間収益(保守的な見積もり)
- レンタカー稼働:5台×月10日×5,000円=25万円
- 代車提供(保険会社経由):月5件×3日×8,000円=12万円
- 合計:月37万円
年間収益
- 37万円×12ヶ月=444万円
変動費
- 車両メンテナンス:月5万円(年60万円)
- 保険料増額分:月3万円(年36万円)
- Web予約システム:月2万円(年24万円)
- 合計:年120万円
純利益
- 444万円 – 120万円 = 年324万円
初期投資30万円で、年間324万円の追加利益。1年で回収できます。
8. レッカーとレンタカー、どちらも顧客を助ける仕事
最後に、一番大切なことをお伝えします。
レッカー業も、レンタカー業も、本質は同じです。困っている人を助ける仕事。
事故で動けなくなった人に、移動手段を提供する。車検で車が使えない人に、代車を提供する。旅行先で移動手段がない人に、レンタカーを提供する。
すべて、「移動の自由」を守る仕事です。
レッカー会社がレンタカー事業を始めるのは、決して「金儲け」のためではありません。お客様により良いサービスを提供するためです。
「事故で車が動かなくなった。でも、すぐに代車があるから困らない」 「車検中でも、レンタカーがあるから生活に支障がない」
こういう安心感を提供できるのが、レッカー×レンタカーの兼業モデルです。
9. まとめ:待機時間を価値に変える
- レンタカー市場は年7,736億円、2030年には1兆円超えの成長市場
- レッカー会社は24時間体制、整備ノウハウなど、レンタカーに転用できる強みがたくさん
- 事故対応+代車提供で、顧客満足度アップ&単価アップ
- 既存車両を活用すれば、初期投資30万円程度で始められる
- 年間300万円以上の追加収益も現実的
- 本業を疎かにしない、保険の見直し、清掃徹底が成功の鍵
あなたの会社のレッカー車、今日も車庫で待機していませんか?
その待機時間を、収益に変えませんか?顧客により良いサービスを提供しながら、会社の経営も安定させる。それが、レッカー×レンタカーの兼業モデルです。
明日の朝一番で、自社の車両稼働状況を確認してみてください。そこに、新しいビジネスチャンスが眠っているかもしれません。