1. はじめに──人手不足の現場で今、何が起きているか

正直に言います。この業界、もう限界に近づいていませんか?

深夜2時の出動要請。スタッフは誰も手が空いていない。40代、50代のベテランが夜勤明けでまた現場へ。若手は来ても1年持たずに辞めていく。そんな光景、もう珍しくないですよね。

私が最近、同業の社長仲間と飲んだとき、こんな話になりました。「外国人実習生、どう思う?」って。数年前なら「うちには関係ない」で終わった話です。でも今は違う。真剣に考えざるを得ない状況まで来ている。

2. ロードサービス業界が直面する現実

2024年2月のトラックドライバーの有効求人倍率は2.76倍で、全産業平均の1.28倍を大きく上回っています。

引用元:全日本トラック協会の調査

つまり、一人の求職者を約3社が奪い合っている計算です。レッカー・ロードサービスはさらに厳しい。24時間対応、天候に左右される、体力勝負──正直、今の若者には敬遠されがちな条件が揃っています。

しかも、ドライバーには大型免許や特殊な技能が必要。簡単に「誰でもできる」仕事じゃない。ベテランの技術をどう継承するか。これは本当に喫緊の課題です。

3. 外国人実習生という選択肢──先行事例から見えてきたこと

実は、運輸業界では既に外国人材の受け入れが始まっています。2024年3月に「自動車運送業」が技能実習・特定技能の対象職種に追加され、トラック運送業を中心に導入が進んでいます。

ロードサービス分野では、まだ事例は限られています。ただ、隣接する自動車整備業界では技能実習生の受け入れが定着しつつあり、そこから見えてくるものがあります。

【実例①】関東の中堅運送会社のケース

ベトナム人技能実習生3名を受け入れたA社(従業員約30名)。最初は車両点検や簡単な回送業務からスタート。驚いたのは、その真面目さと向上心だったそうです。

「日本人の若手より、よっぽど熱心に勉強する」──社長の言葉が印象的でした。早朝出勤も嫌がらない。休日も進んで技術を学ぼうとする。そういう姿勢が、ベテラン社員の心も動かしたんです。

2年目には簡単なロードサービス業務も任せられるように。もちろん、高度な判断が必要な現場はまだ無理ですが、戦力として十分に機能しているとのこと。

【実例②】西日本の自動車整備工場の取り組み

レッカー部門も持つB整備工場では、フィリピン人実習生2名が活躍中。彼らの強みは「コミュニケーション能力の高さ」でした。

英語が堪能で、外国人ドライバーへの対応がスムーズ。観光地近くという立地もあり、レンタカーのトラブル対応で重宝されているそうです。お客様からの評判も上々。「丁寧で親切」という声が多いんです。

4. 外国人実習生を受け入れるメリット

実際に検討する上で、どんなメリットがあるのか整理してみましょう。

1. 深刻な人手不足の解消

これは言うまでもありません。求人を出しても応募ゼロ。そんな会社にとって、確実に人材を確保できるルートは貴重です。

2. 若い労働力の確保

技能実習生の多くは20代。体力勝負の現場では、この「若さ」が大きな武器になります。高齢化が進む現場に、新しい風を吹き込む効果も期待できます。

3. 職場の活性化

異文化交流は、思いがけない化学反応を生みます。「外国人に教える」という行為が、ベテラン社員の技術の言語化につながる。それが若手日本人スタッフの教育にも活きる。そんな好循環が生まれた会社もあります。

4. グローバル対応力の向上

インバウンド需要が戻りつつある今、外国人観光客のトラブル対応は増える一方。多言語対応できるスタッフがいることは、確実に差別化要因になります。

5. 現実を見据える──乗り越えるべき課題

もちろん、いいことばかりではありません。現場の社長として、リアルな課題も知っておく必要があります。

1. 言葉の壁

これが最大のハードルかもしれません。ロードサービスは緊急対応が基本。瞬時の判断、的確な報告が求められる現場で、言語の問題は命取りになりかねません。

「バッテリーが上がった」「パンクした」といった基本用語はもちろん、お客様への説明、緊急時の無線連絡。日常会話ができるレベルでは足りないんです。

対策としては、受け入れ前の日本語研修の徹底。業務マニュアルの多言語化。現場では指差し確認シートの活用。地道ですが、これらの準備が不可欠です。

2. 運転免許・資格の問題

日本の運転免許は、基本的に取り直しが必要。大型免許、けん引免許となると、時間もコストもかかります。

技能実習生として受け入れても、すぐにレッカー車を運転できるわけではない。この「育成期間」をどう設計するかが重要です。最初は整備補助や事務サポートから始め、段階的に免許を取得させる計画が現実的でしょう。

3. 受け入れコストと手続き

技能実習生の受け入れには、監理団体への支払い、住居の確保、渡航費用など、初期費用が100万円以上かかることも。毎月の監理費も発生します。

さらに、入管への申請、定期的な報告、実習計画の作成など、事務作業も膨大。小規模事業者には、この負担が重くのしかかります。

4. 文化・習慣の違い

宗教上の理由で豚肉が食べられない、お祈りの時間が必要、家族をとても大切にする──当たり前ですが、彼らには彼らの文化があります。

「郷に入っては郷に従え」では続きません。相互理解と歩み寄り。それができる職場環境を作れるか。経営者の姿勢が問われます。

5. 3年または5年で帰国する前提

技能実習は最長5年、特定技能でも更新が必要。「やっと戦力になった」と思ったら帰国──これが現実です。

長期的な人材育成という観点では、不安定さが残ります。ただし、特定技能2号が認められれば、家族帯同や長期就労の道も開かれます。制度の動向は要チェックです。

6. 成功のカギは「覚悟」と「仕組み」

先行事例から見えてきた成功の秘訣。それは、経営者の「本気度」でした。

「人が足りないから、とりあえず」では絶対にうまくいきません。言葉の教育、技能の指導、生活のサポート。すべてに手間とコストがかかります。それを「投資」として腹をくくれるか。

同時に、属人的な対応ではなく「仕組み化」することも重要です。

  • 業務マニュアルの多言語化・図解化
  • 段階的な技能習得プログラム
  • メンター制度の確立
  • 定期的な面談とフォロー体制
  • 生活相談の窓口設置

こうした仕組みを整えることで、受け入れは格段にスムーズになります。そして、これは外国人材だけでなく、日本人の新人教育にも確実に役立ちます。

7. 技能実習か、特定技能か

2024年現在、外国人材の受け入れルートは主に二つです。

技能実習制度は、「技能移転による国際貢献」が建前。最長5年で、段階的に技能を習得させる仕組み。監理団体を通じた受け入れが一般的で、サポート体制は手厚いですが、コストも高め。

特定技能制度は、「人手不足対応」が目的。より実践的な人材を受け入れる制度です。技能実習修了者や、試験合格者が対象。転職も可能で、労働者としての権利も強化されています。

ロードサービス業界の場合、「自動車運送業」の枠組みで受け入れることになりますが、具体的な業務範囲や要件は、監理団体や行政書士に相談するのが確実です。

参考:厚生労働省「外国人雇用対策」

参考:出入国在留管理庁「技能実習制度・特定技能」

8. 中小企業こそ、一歩を踏み出す価値がある

「うちみたいな小さな会社には無理」──そう思っていませんか?

実は逆なんです。大企業より、中小企業の方が外国人材と相性がいいケースも多い。距離が近く、家族的な雰囲気がある。社長の目が届く。そういう環境は、彼らにとって安心材料になります。

もちろん、いきなり大人数を受け入れる必要はありません。まずは1名、2名から。試行錯誤しながら、自社に合った形を作っていけばいい。

9. これからのロードサービス業界を担うのは誰か

人口減少、若者の車離れ、労働環境の厳しさ──どれも一朝一夕には解決しない構造的な問題です。でも、現場は待ってくれない。今日も明日も、お客様は困っている。

外国人実習生は、決して「万能の解決策」ではありません。課題も多い。手間もかかる。でも、真剣に向き合えば、確実に戦力になる。それは先行事例が証明しています。

大切なのは、「日本人か外国人か」ではなく、「この業界を次世代にどうつなぐか」という視点。外国人材の受け入れは、そのための選択肢の一つです。

同時に、労働環境の改善、DXの推進、業務の効率化。やるべきことは山積みです。でも、だからこそ。今、動き出した会社が、5年後、10年後に生き残る会社になる。私はそう信じています。

まずは情報収集から。監理団体や業界団体に問い合わせてみる。先行事例の会社を訪問してみる。その一歩が、あなたの会社の未来を変えるかもしれません。