「レッカー車を買いたいんだけど、助成金って使えないの?」

この質問、本当によく聞かれます。正直に言うと、私も最初は「使えるでしょ、事業用の車両なんだから」と思っていました。でも調べれば調べるほど、現実は想像よりも複雑で、そして厳しいことがわかってきたんです。

1. 「昔は良かった」は本当だった

業界の先輩たちと話していると、よく出てくる話があります。

「昔はね、レッカー車の購入費用の半額が補助で出たんだよ。5,000万円の車を買ったら、2,500万円戻ってきた。あの頃は本当に助かったなぁ」

正直、羨ましい。心からそう思います。

当時は、中小企業の設備投資を後押しする風向きが強かった時代だったのでしょう。レッカー車のような専門車両も、「事業に必要な設備」として、比較的素直に補助対象になっていたようです。

でも、時代は変わりました。

2. 2025年の現実:補助額は大幅ダウン

※以下は、レッカー会社関係者へのヒアリングをもとにした一般的な傾向であり、特定の制度や年度を保証するものではありません。

 

現在、レッカー車の購入に使える代表的な補助金としては「ものづくり補助金」などがありますが、その補助上限は750万円程度。しかも、条件がかなり厳しくなっています。

5,000万円のレッカー車を買っても、戻ってくるのは最大でも750万円。昔の2,500万円と比べると、その差は歴然です。

「何か間違ってるんじゃない?」と最初は思いました。でも、これが今の制度なんです。

しかも、補助金には「車両本体は対象外」とする制度も増えてきています。たとえば「小規模事業者持続化補助金」では、原則として自動車は補助対象外。ものづくり補助金でも、車検費用や修理費は明確に対象外とされています。

引用元:ものづくり補助金公式サイト
引用元:小規模事業者持続化補助金

 

なぜこんなに厳しくなったのか

理由はいくつか考えられます。

ひとつは、国の財政が厳しくなったこと。補助金の予算総額が限られる中で、より効果の高い分野に集中投資する方針に変わってきている。

もうひとつは、転売や不正利用のリスク。車両は比較的換金しやすいため、補助金をもらってすぐに売却する…といった問題が過去にあったようです。そのため、審査が厳格化されている側面もあるのかもしれません。

理由はともあれ、私たち事業者にとっては「使いにくくなった」というのが正直な感想です。

3. それでも諦めない:自治体独自の補助金という希望

ただし、まだ希望はあります。

国の制度は厳しくなりましたが、自治体が独自に出している補助金は、まだ比較的柔軟なものが残っています。

たとえば、ある地方都市では「地域の救急インフラを支える事業者」として、レッカー会社に対して車両購入の一部を補助する制度があります。金額は100万〜300万円程度のことが多いですが、それでも大きな支えになります。

また、「雪国」と呼ばれる地域では、冬季の事故対応を担う事業者への支援として、独自の補助制度を設けている自治体もあります。

 

自治体補助金を探すコツ

ただ、これらの制度は表に出にくいのが難点です。

自治体のホームページに載っていないことも多く、商工会や商工会議所に直接聞いて初めてわかる…なんてこともザラ。「知らなかったから損した」という話を何度も聞きました。

だからこそ、地元の商工会や商工会議所とのつながりは本当に大事です。「レッカー車を買いたいんですが、何か使える制度はありませんか?」と素直に相談してみる。それだけで、思わぬ情報が手に入ることがあります。

4. 発想を変える:「車両本体」以外で補助を取る戦略

ここまで読んで、「じゃあもう諦めるしかないのか…」と思った方もいるかもしれません。

でも、ちょっと待ってください。

確かに「レッカー車本体の購入費」への補助は厳しくなりました。でも、開業や事業拡大に必要なのは、車両だけじゃないですよね。

 

周辺設備・システムで補助を狙う

たとえば、以下のような投資は、補助金の対象になりやすいんです。

ウェブサイト・集客の仕組み(持続化補助金)

  • 24時間受付できるホームページ
  • Googleマップでの上位表示対策
  • チラシやステッカー、ユニフォーム

引用元:小規模事業者持続化補助金

配車管理・請求システム(IT導入補助金)

  • 顧客管理(CRM)
  • オンライン決済
  • 自動請求書発行

引用元:IT導入補助金2025

現場品質を上げる機器(ものづくり補助金)

  • タイヤチェンジャー
  • バッテリーテスター
  • 高性能ウインチ

引用元:ものづくり補助金公式サイト

つまり、「レッカー車は融資やリースで確保して、それ以外の投資に補助金を使う」という組み合わせ戦略が現実的なんです。

 

実際の資金設計のイメージ

たとえば、こんな感じです。

開業時の総投資:5,500万円

  • レッカー車本体:5,000万円 → 融資・リース
  • ホームページ・広告:200万円 → 持続化補助金(最大50〜200万円)
  • 配車管理システム:150万円 → IT導入補助金(最大450万円)
  • 工具・測定機器:150万円 → 自己資金or一部補助

このように分解すると、手元資金の目減りを抑えながら、必要な投資を一通り揃えられる。補助金は「車両代の肩代わり」ではなく、「事業全体を強くする加速装置」として使う。これが2025年の現実的な戦い方なんです。

5. 「業務改善助成金」という例外的な選択肢

もうひとつ、知っておいてほしい制度があります。それが業務改善助成金です。

これは、最低賃金を引き上げながら生産性向上の設備投資を行うと、費用の一部が助成される制度。通常は車両購入は対象外なのですが、特例(物価高騰等要件)に該当する場合、一定の自動車も助成対象になる可能性があります。

具体的には、「定員7人以上、または車両本体価格200万円以下の乗用・貨物自動車」などが該当することがあるそうです。

引用元:業務改善助成金(厚生労働省)

レッカー車そのものが該当するかは、正直ケースバイケース。でも、「絶対に無理」と決めつけず、労働局に相談してみる価値はあります。

私が知っている事業者さんで、「ダメ元で相談したら、意外と前向きに検討してもらえた」という例もありました。諦めずに、まずは聞いてみる。それが大事です。

6. EV化の波:電動レッカーという未来

少し視点を変えて、電動化の話もしておきます。

もし将来的に電動商用車(BEV)を検討するなら、国の「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金(CEV補助金)」など、車両側に補助が付く制度があります。

また、環境省も商用車の電動化を支援する事業を進めています。「脱炭素」「環境対応」がキーワードになる時代、この流れは無視できません。

引用元:CEV補助金(一般社団法人次世代自動車振興センター)
引用元:環境省 脱炭素化事業

正直、現時点では「電動レッカー車」はまだ選択肢が限られていて、現場で使えるレベルかと言われると難しい面もあります。でも、燃料費の高騰や将来の規制を考えると、早めに情報収集しておく価値はあると思います。

7. 申請で失敗しないための"リアルな注意点"

最後に、補助金申請で気をつけるべきポイントを、現場目線でまとめます。

 

①先に買っちゃダメ、絶対

これは本当に重要です。補助金は原則として「交付決定後に発注・契約」が鉄則。先に買ってしまうと、どれだけ条件が合っていても対象外になります。

「もう契約しちゃったんですけど、遡って申請できませんか?」という相談をたまに聞きますが、答えはほぼ100%「無理です」。

 

②補助金は後払い

補助金は、基本的に後払いです。つまり、いったん全額を自分で支払ってから、後で補助金が振り込まれる形。

だから、「補助金が入ってから支払おう」という計画は成り立ちません。資金繰り(つなぎ融資など)まで含めて設計する必要があります。

 

③証拠を残す習慣

請求書、振込明細、納品書、写真…とにかく証拠を残すことが命です。

「あれ、この請求書どこいったっけ?」とならないように、フォルダを作って、もらった瞬間に保存する習慣をつけておくと安心です。

 

④計画書は”数字で語る”

「レッカー車が欲しいです」だけでは通りません。

「平均到着時間を現在の40分から25分に短縮」「夜間対応の受注件数を月10件から25件に増加」など、改善の根拠を数字で示すことが大事です。

補助金の審査員は、「この投資で事業がどう良くなるのか」を見ています。現場の実感を、客観的な数字に翻訳する作業が必要なんです。

8. 「知らない」が一番もったいない

助成金・補助金の世界は、正直わかりにくいです。制度は毎年変わるし、条件は複雑だし、申請は面倒。

でも、知らないで損するのが一番もったいない。

特に自治体独自の補助金は、「申請する人が少ないから、実は採択率が高い」なんてこともあります。使える制度があるのに、知らないから申請しない。それって本当に残念ですよね。

だからこそ、まずは地元の商工会・商工会議所、労働局、自治体の商工課に相談してみてください。「レッカー会社を始めたい(拡大したい)んですが、使える制度はありますか?」と。

親身に相談に乗ってくれる担当者さんは、きっといます。

「昔みたいに半額補助が出れば…」という気持ちは、私も同じです。でも、今の制度の中で、工夫して、組み合わせて、最大限活用していく。それが私たち事業者にできることだと思います。

レッカー車は確かに高い。でも、補助金は「車両代の肩代わり」じゃなくて、「勝てる仕組みづくりの加速装置」として使う。そう考えると、見える景色が少し変わってくるかもしれません。