もくじ
1. 「レッカー業界は人が来ない」という悩み
「うちに応募してくる若い人、本当に少なくなったんですよ」
先月、ある中堅レッカー会社の社長から、こんな相談を受けました。求人を出しても応募ゼロ。ハローワークに通っても反応なし。SNSで募集をかけても、既読スルー。
「3K(きつい・汚い・危険)って言われるのは分かってる。でも、うちの仕事はそんなに悪くないんです。給料だって悪くないし、技術も身につく。なのに、若い人が見向きもしてくれない」
これ、レッカー業界全体の悩みです。ロードサービス業界は慢性的な人手不足に悩まされており、各社が積極的に求人を行っている状況です。
引用元:プロドラ「ロードサービス(レッカー運転手)の仕事がきついと言われる5つの理由を解説!」
でも、問題の本質は「3K」そのものではありません。「3K」という言葉の使い方なんです。
2. Z世代が本当に求めているもの
20代の若者、いわゆる「Z世代」の価値観を理解していますか?
マイナビの調査によると、Z世代は「仕事を最優先に置き、生きがいとする」というよりも、「自分の趣味なども大事にしながら、家族と安定して暮らしていく」ことを理想としている人が多い傾向にあります。
引用元:マイナビキャリアリサーチLab「Z世代の価値観:仕事と家族、働き方への考え方とは?」
さらに、SoZo株式会社の調査によると、Z世代が働く場所に重視するポイントを聞いたところ、約6割の人がワークライフバランスと回答しました。
引用元:ミイダス「Z世代とは?仕事に対する価値観や9つの育成ポイントを解説」
つまり、Z世代は:
- バリバリ働いて稼ぐより、安定した生活を送りたい
- 仕事だけでなく、プライベートも大切にしたい
- ワークライフバランスが取れる職場で働きたい
こういう価値観を持っているんです。
3. 「3K」を逆手に取る発想
ここからが本題です。レッカー業の「3K」を、どう言い換えるべきか。
答えは簡単です。言い換えない。むしろ、堂々と認めるんです。
「うちの仕事は確かにきつい。でも…」 「確かに汚れる仕事です。だからこそ…」 「危険な現場もある。だから…」
この「でも」「だからこそ」「だから」の後に何を続けるかが、採用の成否を分けます。
きつい → 「専門技術が身につく」
レッカーの仕事は確かにきついです。深夜の出動、24時間体制、重労働。でも、それは裏を返せば:
- 特殊なスキルが身につく:ウインチやクレーンの操作は、一般の自動車整備士でも学ぶ機会が少ないスキルです。
- 市場価値が上がる:転職市場でも評価される専門技術。SHIBUYA109 lab.の調査では、Z世代の75.1%が「自分の市場価値をあげたい」と考えています。
引用元:SHIBUYA109 lab.「Z世代のキャリア観に関する意識調査」
「24時間体制の勤務」と聞くと、負担が大きい印象を持たれがちです。
しかし見方を変えれば、時間帯や状況を問わず対応するからこそ、緊急時の判断力や対応力が身につく仕事とも言えます。
同様に、「汚れる仕事」という表現も誤解を生みやすい言葉です。
実際の現場では、車の下に潜ったり、油や泥に触れることもあります。確かにきれいな仕事ばかりではありません。
ただその分、机の上では学べない本物の現場力が身につき、困っている人を直接助けたときの達成感を味わえる仕事でもあります。
近年の若い世代、特にZ世代は「モノ」よりも「経験」や「共感」を重視すると言われています。
レッカーの仕事は、まさに人を助けるという実感を伴った経験を積める仕事です。
そのため求人票では、
「汚れる作業あり」と書くよりも、
「困った人を直接助ける、やりがいのある現場仕事」
と伝えたほうが、仕事の本質が伝わります。
また「危険な仕事」というイメージもありますが、事故現場や高速道路、深夜作業などを伴うからこそ、安全管理を徹底するプロフェッショナルが求められます。
命を預かる仕事だからこそ、安全教育やルールが整備され、責任ある役割を担うことになります。
実際、マイナビの調査では、2026年卒大学生の企業選択において「安定している会社」を重視する割合が51.9%と、初めて5割を超えました。
この「安定」には、給与面だけでなく、安全に働ける環境も含まれています。
そのため、
「危険な現場あり」と書くのではなく、
「徹底した安全教育で、ゼロ災害を目指す職場」
と表現することで、仕事の価値や姿勢が正しく伝わります。
引用元:マイナビキャリアリサーチLab「仕事の価値観とは?調査結果の紹介やZ世代などの世代別も紹介」
4. 実際の求人票の書き方:NG例とOK例
NG例:古い価値観の求人票
【募集】レッカー運転手
・24時間体制
・深夜勤務あり
・重労働
・要普通免許
・未経験者歓迎
仕事内容は事実として書かれていますが、「どんな人に、どんな価値がある仕事なのか」が伝わりません。これでは、仕事に興味を持つ前に不安だけが先に立ってしまいます。
OK例:Z世代に響く求人票(表現例)
【募集】困った人を助けるロードサービススタッフ
■この仕事の魅力
・専門技術が身につく(けん引免許取得支援あり)
・市場価値が上がる技能資格を会社負担で取得可能
・人の役に立つ実感が毎日ある
■働き方
・シフト制で休みの希望が通りやすい
・月8〜10日休み(年間休日110日以上)
・残業代は1分単位で支給
・有給取得率85%以上
■キャリアパス
入社1年目:基礎研修+先輩との同行
入社2年目:一人立ち+各種資格取得
入社3年目〜:リーダー候補、または技術スペシャリスト
■こんな人に向いています
・人の役に立つ仕事がしたい
・手に職をつけたい
・安定した収入が欲しい
違いが分かりますか?同じ仕事なのに、伝え方を変えるだけで印象が全く違います。
5. 給与の見せ方も重要
Z世代は給料にもシビアです。マイナビの調査では「給料が良い」という項目が4年連続で増加しています。
引用元:マイナビキャリアリサーチLab「仕事の価値観とは?」
でも、単に「月給25万円〜」と書くだけでは不十分です。
NG例
月給:25万円〜35万円
OK例(表現例)
■収入例
・入社1年目:月給25万円+歩合給(年収350万円)
・入社3年目:月給30万円+歩合給(年収450万円)
・入社5年目:月給35万円+歩合給(年収550万円)
※残業代は別途全額支給
※賞与年2回(昨年度実績:計3ヶ月分)
※各種手当あり(深夜手当、出動手当、資格手当)
具体的な年収例を示すことで、「この会社で頑張れば、どれくらい稼げるのか」がイメージできます。
6. ワークライフバランスの具体的な見せ方
「ワークライフバランス重視」と書くだけでは不十分です。具体的に示す必要があります。
NG例
・週休2日制
・有給休暇あり
OK例
■働き方の特徴
・シフト制で事前に休み希望を提出できる
・連休取得OK(実績:年2回以上)
・有給取得率85%以上(業界平均を大きく上回る)
・深夜手当は法定の1.5倍(22時〜翌5時)
・家族の誕生日は優先的に休める制度
■先輩社員の声
「前職は毎日23時まで残業でしたが、ここは残業が少なく、趣味の時間が取れます」(入社2年目・26歳)
7. SNSの活用方法
Z世代の情報収集のメインはSNSやYouTubeです。求人票だけでなく、SNSでの発信も重要です。
投稿すべき内容
- 日常の業務風景(プライバシーに配慮)
「今日は新人研修。先輩が丁寧に指導中
当社では1対1の指導体制で、未経験でも安心してスタートできます」
- 資格取得のサポート
「おめでとう!社員の○○さんが、けん引免許に合格!
受講費用は会社負担。あなたも手に職をつけませんか?」
- 休日の過ごし方
「今日は休日。先輩社員は家族とキャンプに出かけたそうです!
シフト制だから、平日の空いてる時にお出かけできるのが魅力」
- 社会貢献の実感
「深夜の高速道路で立ち往生していたご家族を無事救援。
『ありがとう』の言葉が、この仕事の一番のやりがいです」
8. 面接での伝え方
求人票だけでなく、面接での伝え方も重要です。
NG:押し付ける
面接官:「うちは24時間体制だから、深夜勤務もあるよ。大丈夫?」
→これでは「きつそう」というイメージしか残りません
OK:選択肢を示す
面接官:「当社は24時間体制ですが、シフトは2パターンあります。
①日勤メイン:8時〜20時(月8日休み)
②深夜メイン:20時〜翌8時(月9日休み、深夜手当1.5倍)
どちらが自分のライフスタイルに合いそうですか?」
Z世代は自分で選ぶことを重視します。押し付けられるのではなく、選択肢を与えることが大切です。
9. 「アットホーム」は逆効果
SHIBUYA109 lab.の調査によると、本来ポジティブな言葉である「アットホーム」などの言葉が、若者にはネガティブに感じられる実態があります。
引用元:SHIBUYA109 lab.「Z世代のキャリア観に関する意識調査」
Z世代にとって「アットホーム」は:
- 「プライベートに踏み込まれそう」
- 「飲み会が多そう」
- 「休日も連絡が来そう」
という負のイメージを持たれがちです。
使うべき言葉
- 「アットホームな職場」→NG
- 「風通しの良い職場。相談しやすい環境です」→OK
- 「年齢関係なくフラットに意見が言える職場」→OK
10. まとめ:3Kを強みに変える7つのポイント
- 「きつい」→「専門技術が身につく」 市場価値が上がる、転職でも有利
- 「汚い」→「本物の現場力」 リアルな経験、達成感がある
- 「危険」→「安全管理のプロ」 徹底した教育体制、社会的意義
- 給与は具体例で示す 年収例、手当の内訳を明確に
- ワークライフバランスを数字で 有給取得率、休日数を具体的に
- SNSで日常を発信 Z世代の情報収集はSNSがメイン
- 選択肢を与える 押し付けではなく、自分で選べる働き方
レッカー業界の人手不足は深刻です。でも、伝え方を変えるだけで、若い人の見る目は変わります。
「3K」という言葉に負けず、この仕事の本当の価値を、Z世代に響く言葉で伝えていきませんか?